【2019年8-9月】「なめらかな世界と、その敵」「ドラゴンクエスト ユア・ストーリー」寄稿しました

・「なめらかな世界と、その敵」

 短編小説集『なめらかな世界と、その敵』(伴名練)のレビューを寄稿しました。これまでの作品はほぼ発表初日に同人誌やアンソロジーで拝読していましたが、思うところがありすぎる作品に対してはどうしても過剰に熱が入ってしまいます。氏とは直球の同世代で、noteで書き出されていた読書遍歴についても諸々頷くところが多いです。ハーラン・エリスンの著作について刊行が完全に止まっていた2000年代中頃、「竜討つものにまぼろしを」「冷たい友達」「ヒトラーが描いた薔薇」などを読むべくSFマガジンのバックナンバーを漁り、メリル『年刊SF傑作選』シリーズを集めに神保町を徘徊し、カヴァン、バラード、ニーヴン、ディッシュ、スタージョン、ヴァーリイ、ボーモント、ブロック、カーシュ、ボリス・ヴィアン……といった諸々探しに明け暮れる短編小説中毒者をやっていたころのことを思い出させてくれました。

 文中にいくつか匂わせた記述について、蛇足かと思いますが書き足しておきます。

また主人公・伏暮速希のある正体については意図的にぼかされているが、作中少々過剰に繰り返されるある単語、それがもともとどのような意味を持つものであったかを踏まえながら叔父の言葉をよく読めば、本作がもともとどのような構想だったかに迫ることは可能であり、初版249ページ前後にその名残であろう苦心の跡が残されている。

  朝日新聞デジタルのインタビュー記事で著者本人が述べているとおり、本作主人公・伏暮早希の性別は明言されていません。字の文の一人称はたしかに「僕」ですが、P.264から始まる演説でのみ「わたし」になっています。その他早希の叔父からの伝言として、薙原がいう

君とハヤキがくっついて何とか子孫を残して (P.283)

 というセリフも、取りようによるものであり性別を決定づけるものではありません。記事内で触れたのはP.247以降執拗に繰り返される彼らの出席番号(男女混合)で、メンバー別に整理すると奇数・偶数と男性・女性の配分に少なくない偏りがあることがわかります。もちろんこれだけでは偶然ということもあり得るのですが、しばらく読み勧めていくと

出席番号10番の鷺森翔太は、(略)折りたたみイスに腰掛けた彼女の母親が、(略)母親は窓の向こうの長男に話しかけるばかりで、(P.249)

 と、明らかに性別がおかしい人物が発生しています。ということで、おそらくは当初、男女交互だったキャラクターの出席番号を、性別で縛らないために修正し直したことが推察できます。*1 ではもともとどちらであったのか気になってしまう、かつ氏の最終的な結論を以って良しとしない方は、二年D組のクラス名簿を作ってみてください。

・「ドラゴンクエスト ユア・ストーリー」

 努力はしたのですが、どの方面からもフォローできなかったため鑑賞直後の感情に素直に書かせていただくことになりました。もともとは「RTAプレイヤーからみるシナリオ省略術」のようなものを考えていたのですが、そういう次元の作品ではなかったことについて残念な思いがあります。よく言われている「ファンの気持ちを考えたらやるべきではなかった」というよりも、「やるのならもっとやりようはあったはず」というところで、ドラゴンクエストというIPを使って特大の予算で作品を作ったはずなのに、新しいファンの呼び水になるどころか結局作り手側の力不足に集約されてしまう、というような作品になってしまったことが残念です。

 

 初めてWeb媒体に記事を載せてから、本日で2年となりました。やらせてもらえる限りはやらせてもらおうと思っています。よろしくお願いいたします。

*1:そうでなかったとしても、こちら誤植かと思いますので再版時に修正されるでしょう。